ステージ5 — デプロイと観察 (Ship & Observe)
デプロイは終わりではなく、次サイクルの入力を集める始まりだ。
このステージの目的
ステージ4を通過した成果物は、いよいよ実環境で検証を受ける番だ。このステージの役割はデプロイ実行そのものではなく、運用環境で起きることを次サイクルが消費できる形へ戻すことだ。CI/CDパイプラインと観測ツールはこのステージの前提条件だ。自動デプロイがないと検証通過とデプロイの間に手作業が挟まって速度を削り、観測がないと運用問題を誰も気づかないまま次サイクルへ移る。どちらか一方でも欠けるとVDLCはここで止まる。
実行順序
- 検証を通過した成果物を自動でデプロイする。 デプロイ可否の判断はステージ4の関門(リスクに比例した人間レビューを含む)ですでに終わっているので、デプロイ実行は別途承認なしにパイプラインがそのまま処理する。ここで実行まで人が再び介入すると、検証ステージで確保した速度が無意味になる。
- 運用データを観察する。 ログ、エラー率、遅延時間、ユーザー行動指標など、あらかじめ定めた観測対象を継続的に確認する。観察は事故が起きた後ではなく平常時に行われねばならない。
- 課題を再現可能なコンテキストとして整理する。 問題を見つけたら、ログ、再現手順、期待動作の三つを備えた形で記録する。この三つが欠けると、次サイクルで調査を最初から繰り返さねばならない。
- 整理したコンテキストを次サイクルの入力として渡す。 課題はステージ1(意図定義)やステージ2(コンテキスト設計)へ戻る材料になる。ここで切れると観察がただの記録で終わる。
成果物
- 自動デプロイ履歴 — パイプライン実行ログとして残す
- 再現可能な課題コンテキスト — ログ・再現手順・期待動作を備えた記録
課題コンテキストは、次サイクルのステージ1意図文書やステージ2コンテキスト資産に入力として接続されねばならない。
完了基準チェックリスト
- [ ] 検証通過の成果物が人の手動承認なしに自動デプロイされる
- [ ] デプロイ後に運用データを観察するツールと対象が定まっている
- [ ] 見つかった課題ごとにログ・再現手順・期待動作がともに記録されている
- [ ] 整理された課題が次サイクルの入力(意図文書またはコンテキスト資産)へ接続されている
- [ ] CI/CDパイプラインと観測ツールが実際に備わっている
よくある誤り
- 課題を会話でだけ伝える。 「これおかしいです」の一言で流すと再現コンテキストがなく、次サイクルのエージェントや人が最初から原因を探し直さねばならない。
- デプロイ承認の関門まで自動化する。 自動化すべきは承認された成果物のデプロイ実行であって、デプロイ可否の判断ではない。リスクが高い変更までステージ4の人間レビューなしに直ちに通すと、要求解釈・アーキテクチャ選択と同様に判断ポイントの人間の関門が消え、間違った方向へ遠くまで進んでしまう。
- 観察を事故対応の時点まで先送りする。 平常時の観測なしに障害が起きてからログを漁ると、再現可能なコンテキストを作る時間と情報がすでに消えた後だ。
Claude Codeなら
TIP
運用課題をトリガーにエージェントを投入するパイプラインを構成すれば、課題登録から再現・修正提案まで人の介入なしに一次処理が可能だ。課題テンプレートにログ・再現手順・期待動作の三項目を強制すれば、エージェントがすぐに着手できる入力が確保される。
CIパイプラインの中でヘッドレスにclaudeを実行すれば、デプロイ後に見つかった失敗を検知して原因分析や修正コミット提案まで自動化できる。人はこの提案を検証ステージ(ステージ4)へ再び流し込み、関門を通せばよい。